勉強会を開催しました
- iyota3
- 8 時間前
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日時 令和8年2月21日
場所 山形テルサ(山形市双葉町)
講師 東北大学名誉教授 清和研二 氏
参加者:9名(会員6名、会員外3名)

講師の清和研二氏は鶴岡市黒川に生まれ、北海道大学農学部を卒業後、北海道林業試験場、東北大学大学院農学研究科(附属複合生態フィールド教育研究センター)に勤務されました。現在は退官され、東北大学名誉教授を務められています。また、山形県内の豊かな広葉樹資源を単なる薪やチップとしてだけでなく、「暮らしを彩る価値ある資源」として再発見・活用することを目指す「広葉樹を暮らしに活かす山形の会」の共同代表としても活動されています。
清和氏はこれまで、北日本の森林をフィールドに、樹木の世代交代や多種共存のメカニズムを研究してこられました。特にスギ人工林を「針広混交林」へと誘導する試験研究においては、水質浄化、葉量増加による光合成生産力の向上、水源涵養機能の改善、広葉樹の良質材生産など、生態系サービスを多角的に高める仕組みを科学的に立証されています。
今回は「自然に倣う林業」と題して、環境向上と持続的な木材生産を両立させ、地域を潤すための施業の在り方について、以下の3つの課題をテーマに学びました。
(課題)
1 環境を向上させる(温暖化抑制、水源涵養機能などが高い)森林とはどんな森?
2 環境向上と持続的木材生産が両立する森林管理とは?
3 山地の林業者から木材加工業者、ひいては都市住民までが共有する理念とは?
課題1 環境を向上させる森林とは?
・樹木の炭素を貯留する能力については、幹が太くなる(大径化する)ほど高くなる。オーストリアの熱帯雨林では一つの林分で直径の大きな上位木から5%の木が、地上部現存量全体の49%を占めることが報告されている。国内においても、個体数で全体の4%しかない50cm以上の樹木が36%の炭素貯留量を有している。
・日本では、1980年代には大量の通直な巨木が伐られたため、大径材利用の持続的産業が生まれてこなかった経緯がある。多くの広葉樹が100年生であってもまだまだ大きくなることから、目標林型を巨木林とし、太い木を一定レベルで残しながら切る必要がある。
・水質浄化機能の高い森林については、スギ林を強度(本数を多く切る)及び弱度(本数を少なく切る)で、かつ太いものから細いものまでまんべんなく伐る「全層間伐」で間伐を行った結果、弱度区においては広葉樹が下層にしか見られなかったが、強度区ではスギの間に生えていた広葉樹が樹冠まで届くほど成長したのが見られた。
とのことでした。
ここで着目されたのが窒素の動態でした。通常、落葉等から供給された窒素は土中の微生物により有機態→アンモニア態→亜硝酸態→硝酸態へと変化し、再び樹木に吸収されます。しかし、硝酸態窒素は、量が多いと水質汚染の原因ともなります。弱度区では硝酸態窒素が樹木に吸収されず、林外への流出が見られましたが、強度区では、広葉樹の細根と葉量が多いことにより、硝酸態窒素の樹木への吸収が多かったため、林外への流出が極めて少なかったことから、水質浄化の向上が示唆されました。
以上より、炭素貯留による気候変動抑制・水源涵養機能を同時に高いレベルで実現する森林は地域固有の種多様性を持つ巨木林であることを、地域と共有しながら進めていったほうが良いとの話をされました。
課題2 環境向上と木材生産が両立する広葉樹林施業の方法は?
森林タイプは菌根菌の種類により以下のとおり類型化でき、施業方法もそれぞれで異なるとのことでした。
・外生菌根菌タイプ(ブナ、ミズナラ等):
群生しやすい。施業では「全層間伐」により樹間競争を緩和しつつ、多樹種の導入を図る。
・アーバスキュラー菌根菌タイプ(ミズキ、サクラ、ホオノキ等):
母樹の下では病気にかかりやすく、多樹種混生となりやすい。元来の樹種数が少ないため、種数を維持しながら「弱度の全層間伐」を行う。
課題3 川上から川下まで共有すべき理念とは?
清和先生からは以下の3つの理念についての提唱がありました。
1 価値の高い木製品は生態系サービスの高い森から生産されたものである。
2 長命な大径木は長く使い続ける
3 小径で量の少ない樹種でも丁寧に扱う
地球温暖化を抑制かつ水源涵養機能が高くなる施業を行った森林(多くの種で構成される巨木林)で生産された木材は、地元に還元できるように付加価値を付けていくことが大切との事でした。
また、有名でない樹種も木材利用できることから、多種共存の森林をつくっていくためには、製材関係(川中)だけでなく、林業関係者(川上)や消費者(川下)の理解を深めることが必要との話がありました。
(まとめ)
最後に、まとめとして以下の項目が示されました。
1 多種共存の巨木林を目指し、本来の生態系サービスを取り戻す
2 全層間伐で種多様性を維持しながら、年々、より太い木を間伐していく
3 木の価値は生態系サービスの高さという理念を共有し、山間地を豊かに

私たち森林総合監理士の使命は、森林の「経済的価値」と「環境的価値」を両立させ、持続可能な地域社会を構築することにあります。しかしながら、生物多様性の高い森づくりについては、事例が少なく、森林所有者や林業関係者からの理解も十分得られていない状況であることから、多種共存の森づくりに関して、関係者の理解を深めていきたいと考えます。
(文責 尾形俊成)



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